2017年01月04日

最強囲碁AI、Masterの棋譜解析(1)

今回から最強囲碁AI「Master」の棋譜を見ていきます。
序盤は布石の見本のような打ち方をしますが、中盤以降の収束がすば抜けているように感じます。
級位者の方でも恐らく参考になると思うので、野狐囲碁から棋譜を得て棋譜並べすることを勧めます。
Masterの碁を一言で言い表すとするなら「美しい碁」というところでしょうか。
終盤も乱れる様子がなく、AIの弱点はほぼ消えていると見ていいでしょう。
さて、対局を振り返っていきます。

囲碁1010.jpeg
【実戦図1:見慣れた布石】
黒番はMaster(囲碁AI)、白番はblack2012です。
黒7までの進行は今でもよく打たれる布石の一つです。
囲碁AI全般に言えることですが、序盤は特別な手を用いずに無難な手を打ち進めることが多いです。

囲碁1011.jpeg
【実戦図2:面白い着想】
黒1に白2のコスミツケは黒の根拠を奪う厳しい態度。
白4と受けて黒Aとヒラけば無難な進行になりますが、ここで黒5の肩ツキが面白い。
白を強化することになっても、自陣を整備する価値が高いと見ているようです。

囲碁1012.jpeg
白は封鎖されないように白6、8と脱出を図るのに対し、黒9と押さえ込むのが柔軟な着想。
白12まで、左辺の白に良い形を与えてしまうが、左辺の黒は三間幅で治まったのも大きい。
黒13、15は白を分断しながら自身を補強する石運びです。

囲碁1013.jpeg
白16は断点を守る大切な一手。
しかし、黒17から19を決めた後、黒21を利かせるのが気持ち良く、黒良しでしょう。
黒23もAの切りを見つつ、自軍整備する好手になっていますし、黒石の働きが白を上回ってます。
この対局に限らず、30~50手辺りで不思議とMasterは優勢を築くことに成功しているのです。

囲碁1014.jpeg
【参考図1:人間界の打ち方】
下辺の厚みを背景に黒1とハサむのが無難と言われる打ち方の一つ。
黒3に白4と左辺を補強することで、厚みの働きを遮るのが白の狙いです。
ただし、左上の黒もしっかりするので良いことばかりではありません。
囲碁AIの図と比べて、人間が選ぶ図の特徴は形を必要以上に決めないことにあります。

囲碁1015.jpeg
【参考図2:封鎖の構想】
白1と下から受けた場合、黒2から6と封鎖していく流れになりそうです。
左辺は元々白がいた場所なので、押し込めて活かす分には黒悪くないでしょう。

囲碁1016.jpeg
一見すると、白7を利かしてから白9、11と形を決めて、白打てるように見えます。
しかし、黒12から14に打たれてAとBを見合いにされて白苦しい碁形となっています。

囲碁1017.jpeg
【実戦図3:巧みな打ち回し】
黒1のカケツギが好手。
白2と断点を守るのは仕方ないが、黒3から7と上を厚くしながら下辺を補強できたので黒良しです。
左辺の白をうまく利用して、全ての好点に回ることに成功しています。

囲碁1018.jpeg
白8と頭をハネられても黒9、11と厚みの傷を守る調子を得られるので黒十分です。
白12が来たので、黒13から15と下辺を守る調子も得られて、自然に地と厚みを得ています。
少し前まで黒は下辺も中央も味の悪い形でしたが、いつの間にか好形を築いています。

囲碁1019.jpeg
【実戦図4:中盤の収束】
黒1から5は下辺を黒陣にする力強い態度。
ただ、白6が模様を消しつつ右辺の白陣を広げる好点なので、白も悪くなさそうだが・・・。

囲碁1020.jpeg
黒7、9を決めた後、黒11から15と右辺の白陣を制限します。
白16に黒Aと上辺を広げたいところですが、白Bのスベリがあるため見た目ほど大きくなりにくい。
かと言って、中央を囲うのは他に悪影響を及ぼす可能性もあり、どう打つべきか難しい大ヨセです。
Masterはそんな難しい局面で簡明な収束を見せてくれました。

囲碁1021.jpeg
黒17とノビるのを選択。
白18の消しを誘発しますが、黒19から21の攻めで黒打てると判断したようです。
右辺の白を削るのも狙いですが、元々上辺は白からスベリがあったところなので、
白に上辺を荒らされても腹が立たないと見ることもできます。
最善かどうかはわかりませんが、簡明な勝ちを目指すという意味ではなるほどと思える収束です。

「編集後記」
Masterは物凄く強いです。
白の方も悪手を打っているように思えないのですが、何故か差が開いています。
やはり、人間が打つ碁には誤った考え方や解釈が多いのかもしれません。
これから囲碁AIの棋譜を多く分析して、良いところは吸収していきたいところです。
posted by okao at 18:18| Comment(2) | TrackBack(0) | コンピューター囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
Master、幽玄の間にも出てきましたね。
全部見ましたが、日本人棋士がいなかったようで寂しく思いました。何かセレモニーでもあったのでしょうか。
AIはアルファ碁の改良版ですかねぇ。
正月休みはサーバーが空くので、棋士へのお年玉だったのでは?
ただ学習が進んだと言うだけでは無く、コウ、詰碁、戦いの読み切り、のプログラムを追加したように感じました。
私のような初心者でも納得できる手がいくつもあり、嬉しかったです。
人間と違い、反発する手などが無く、盤面最大の手を淡々と打っているように感じ、面白かったです。

Posted by kikuyan at 2017年01月05日 09:40
masterはアルファ碁でしたね。
明日以降にグーグルが発表した文書の概要をお伝えする予定。
囲碁AIは比較的意味の分かりやすい手が多いのです。
2017年は囲碁AIが提示した可能性にどう向き合うのか、
考えさせられる年になりそうですね。
Posted by okao at 2017年01月05日 10:03
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